第4回 川上浩司氏 日本の医薬品業界を斬る、若きエヴァンジェリスト 最年少、京大教授が成功への道しるべをしめす!(3)

野心を持ち、コミュニケーションができる日本人に

―――米国での生活を経験して、どのようなものを得られましたか?

 

川上

私は平和愛好者ですし、あくせくして人を蹴落とすような事は嫌いでした。全然、向かなかったんです。そういう意味では、日本っていい国だなぁ、って素直に思えるような、典型的な幸せな日本人だったんです。でも、米国で生活してみてわかったのが、世界は食べていくのに必死なんだ、ということでした。

 

 

―――日本人はどうしても外の世界を知らずに来てしまう傾向がありますね。


川上

 やはり世界中からやってくる人々は、競争してでも米国でやって行こうというのが当たり前ですが、日本人は日本が一番いい国だと思っていて、競争ができない、競争をしらない、野心がないと三拍子揃っているんです。日本が国際社会で生き残って行くにはそれではだめだと思うんです。

 

―――生き残って行くにはどうやっていけばいいのでしょう?

 

川上

 2つ大事な事があります。ひとつは野心です。私はボスから『No Success without Ambition(野心なき成功はなし)』という格言を教わりましたが、生きていくには、野心とモチベーションが大事なんです。今にしてみれば当たり前の事だという思いがありますが、その時は、正直、凄いところに来てしまったなと思いました。

 

 ふたつめに学んだのは、人とのコミュニケーションを大事にするという事でした。私は人の悪口が嫌いで、悪口を言う人もどうかなと思うのですが、これもボスからの格言で『Never Burn Your Bridge(あなたが歩いてきた橋を焼くな)』があります。これは自分が敵対する事があっても、そこで喧嘩をしないでコミュニケートをしなさいと言う事です。世渡りというと変に聞こえますが、社交的に、自分の事をきちんと説明して、いかに宣伝できるか。フレンドリーなやり方が大事だという事です。

 

 帰国してからはそういう事ができる日本人をきちんと育てていかなければならないという事をすごく感じるにようになりました。いまは学生たちには、必ずこの2つの話をしています。

 

 

―――若干、専門的な話になりますが、いまの医薬品業界、医薬行政において、日本と世界の大きな違いとはなんでしょう?

 

川上

 まず、強い医薬品産業をつくらなければならないと感じています。極論かもしれませんが、それには一つの強力な企業でいいと思うのです。それはどういう事かといいますと、フランスやイギリスは、医薬品産業が生き残らなければ、国民に提供する薬が確保できなくなると考え、行政指導を行なって製薬会社を整理統合する事で、強力な医薬品産業に変化させる事に成功しました。


ところが、日本では製薬会社が70社もあって、混沌としたままです。このままでは共倒れする可能性も十分あります。

 

 また、それには医療や医薬品行政をどうするのか。産業構造としてビジネスを考えなければならない。いまから20~25年後に作る薬をイメージしていないとだめなんです。というのは、現在、日本の医療費はGNPの7%、31兆円に上ります。しかし、日本の人口は30年後は1億人を切って、確実に税収が減りますので、そうなると7%の医療費を維持する事はできなくなります。

 

 これでは制度と成長戦略が矛盾していて、医療制度や国民皆保険を維持する事はできなくなるのです。社会保障、安全保障の中で医療を考える時に、医療を以前の水準に戻すには、国民の税金をもっと入れるか、もうひとつは国民皆保険を考え直す必要があると思うのです。

 

―――それにはどのような解決方法があるとお考えですか?

 

川上

 解決方法が簡単に示せる事ではありませんが、いくつかアイディアをお話しましょう。例えば保険収載をどうするか、保険収載すべきでない薬を減らしてはどうかという案です。

 

 私は昨年までかなり太り気味でした。それでスタチン製剤の服用をすすめられたのですが、これって普通に食事などでダイエットすればいい事で、通常のダイエットに使う必要があるのだろうか、そもそもそれを国民の税金でまかなう必要があるのだろうか、という疑問が沸いてきました。もちろん先天異常などの場合には必要ですが、自己管理でカバーできるところもあるのです。こういう薬品に税金を使うのが国民の医療と言えるのだろうか、という事です。

 

 もうひとつ。原資の再配分が必要ではないでしょうか? という事です。例えば、“課長になったら保険”、おかしなネーミングかもしれませんが“セレブ保険”みたいなものをつくるという案です。どういう内容の保険が必要かは、自分の年収に見合った、個人の自由にまかせた保険にすればいいんです。国が税金を投入して不公平な事をする必要はないんです。

 

 これが実現すれば、いまの原資の再配分して、相当の医療費が浮くはずです。それによって、本当に必要なところに医療費をかけるのです。そうなれば子どもの医療費が全部無料にできるのではないか、老人の医療費配分をふやせるのではないかと思います。

 

―――セレブ保険、いいですね。日本の保険会社がこういう柔軟な発想をしてくれるかどうかはわかりませんが、米国の保険会社ならやってくれそうですね。

 

川上

 かなり無茶で突拍子もない発想に聞こえるかもしれませんが、国民の選択として社会保障を考えなければならない時期に来ている事を、医療や医薬品にたずさわる方々はもちろん、国民のみなさんにも本気で考えもらわなければならないと思うのです。