第1回 児玉充晴氏 「ビジネスを、人をマネジメントする」とは?ベンチャーの神様がフューチャーラボラトリを丸ハダカにする!(3)
フューチャーラボラトリのビジョン
児玉先生に橋本昌隆について語っていただくとともに、橋本がいま何を考え、何を実行に移そうとしているのか、語っていきます。
チバ
まず、最初に児玉先生は橋本さんのどんなところを面白いと感じていらっしゃいますか?
児玉
在職中にどのようなことが身に付きましたか?
児玉
なんといっても、人脈形成力。これはピカイチですね。そして高度な営業力です。それも、ちょっとやそっとじゃないものすごく高度。これだけの人はめちゃくちゃ少ないんですよ。それもただガムシャラに行動力があるのではなく、コンセプト力のある高度営業力です。こうなると世の中にほとんどいませんね。当たり前の事ですが、社長には営業力がなければだめです。橋本さんは、まさにコンピュータ付きの高い営業力をもった経営者という事になります。こういう方はベンチャーの中でも珍しいです。
そして、この時代、自分の分身を作ろうというのもなかなかいない。普通、オレがオレが、が社長というものですから、自分の分身を作って、他のヤツにやらせてみよう、というのはましてほとんどいません。凄いところの3つめが仕組みづくり屋という事ですね。橋本さんの場合は、とんでもない仕組みが内蔵しています。優秀な人材をインターンシップとする事で、“草”を放っているわけです。そうする事で、普通では知り得ない情報も取れるという事です。
山内
なんだかベタ褒めですね。
児玉
いやいや、もちろん欠点もあるんです。それは「あんた分かってても、まわりはさっぱりわかりません」という事。橋本さんは根回しが上手。そのあたりは抜かりはありません。ところが、その割には“人に考えを伝えるのが下手”ですね。
どうも上滑りしている感じ、と言えばいいんでしょうか。これは大事な事ですが、だからといって、それを直してしまってはいけないんです。
ツッコミにはボケが必要。
橋本さんがボケかどうかはわかりませんが、ボケならツッコミがいれば、それでいいんです。とにかく、これからの課題は、それをフォローする人が必要になるという事です。まず、橋本さんが何を目標にしていくのか、私はフォローし続けなければならないと考えています。
チバ
児玉先生より、“人に考えを伝えるのが下手”とのご指摘がありました。 いい機会ですので、児玉先生のお話を受けて、橋本さんが現在もっとも考えていて、力を入れている事を聞かせていただけますか?
橋本
これが一番という事ではないのですが、いまは「社会起業家」について考えています。本来、アメリカで生まれた時は、NPOとは儲けより、世のため人のために業を起こすもので、もともとはそういうものでしたが、いまでは社会的起業家=事業型NPOと言えます。なんでこんな事を言っているのかといいますと、僕は10年前に人材派遣の仕事をはじめたのですが、この仕事は基本的に弱者から搾取して儲ける商売という一面が今でも残っています。歴史をさかのぼると、戦前、もしかしたらもっと昔から単純労働者、つまり日雇いを大量に集めて、重労働させて、そこから搾取するといったものから始まっています。
山内
なんだか時代劇で悪役が出てきそうな場面を思い起こしますが、現実もそれほど変わらないものだったわけですね。そんな事がいまだにあるのでしょうか?
橋本
いいえ、もちろんいまはそんな事はありません。
人材派遣法という法律ができてから、人材派遣業も大きく変わってきたんです。
ところが法律に守られるようになっても、派遣社員が大変な状況にあるのはあまり変わっていないと思います。人材派遣が必要とされているのは、今の世の中の流れです。中国やインドのコストに対抗する競争力をつけるため、正社員よりコスト競争力のある期間労働者を100人集めてほしい、といった人材派遣オーダーが多く、いまや派遣など非正規で働く人が1,700万人と言われています。
あちこちの企業で人材派遣や請負での雇用問題が話題になっています。そうした課題は改善されなければなりませんが、当事者である派遣社員のための組合は、まずありません。正社員雇用を増やすといっている会社も多いのですが、海外資本が多く入っている会社は、株主からのプレッシャーも強いですし、組合との兼ね合いも合って、なかなか難しい話だと思います。
さらにホワイトカラーエグゼンプションが導入されると、正社員をいつでも解雇できる状況になるでしょう。そうして上で守られている人と下の方の流動化する人との雇用の割合は、1:9になると思っています。それこそ年収300万というラインがボーダーになってくるわけですが、200~300万ぐらいがいまの派遣社員の年収にあたります。
日本の好景気はこうした裏があって成り立っていると言えると思うのです。これは不健全以外の何者でもないと思います。雇用の問題、経済の問題からもっと違った側面での競争力を持った企業が必要ではないかと思います。
大学や企業から新しい企画が立ち上がり、ベンチャーを作っていこうという動きがあります。フューチャーラボラトリは、そうしたベンチャーを生み出し、育てて行く会社にしたいと考えています。むしろ、NPOや社会起業家と呼ばれるエリアに、徐々にシフトしていきたいと思っています。

チバ
児玉先生のご指摘にもありましたが、フューチャーラボラトリでは、山内さんのように在学しながら、お仕事を手伝う、いわゆるインターンシップ制度を積極的に進めていますが、これはどういう考えから導入したのですか?
橋本
リスクを背負うには不安定な世の中ですので、これまでのように一人でやっていたらダメになると思ったのがきっかけです。そこで、分身というか、そういう働きをしてくれる人を置こう、というのがあり、その部分をインターンシップにやってもおうと思った訳です。
弊社のインターンシップに応募してくる学生は、非常に優秀で学生の間に起業したいと希望するものも多く、学生の身分ではなかなか会えない大手企業の経営層、ベンチャーの社長、官公庁関係など、仕事の現場というものを知ってもらうだけでも、学生のみなさんにとっては、十分過ぎるほどのメリットがあるんですよ。
チバ
フューチャラボラトリも含め、起業しようとする時にはどこに目標を置いて、なにをすればいいのでしょう?
児玉
まず、それにはもうひとりの自分をどう外に作るかを考えなければなりません。
3年前にマザーズに上場した企業の社長をフォローしつづけた事があるのですが、彼は人格を四分割して、いろんな人格を使いこなしていました。
橋本さんも、今後、成長株だしうまくやれば上場できるでしょう。
必要なのはどうやって企業を評価するかです。企業の将来は予測する事ができます。それはその人の過去の事から将来が予測できるのです。過去をどう解析し、どう分析するか。これまでやってきた事実、そこから将来を分析するのです。
ベンチャービジネスのプランには、過去を棚卸ししなければだめです。
計 画 未 来
↑
十 現 在
↑
過 去[たなおろし]
ところが多くの人は、それを企業競争力評価論でやってしまいます。私は書店で売っている理論は一切やりません。それでは、どうするか。技術を金に換える知恵をもとに、プランを作ることができます。
山内
どのようにすれば、プランがたてられるでしょう?
児玉
第三者の眼から見たよいところを伸ばし続ければいいんです。それには僕とブレストすればいいんですよ(笑)2~3時間も僕と掛け合い漫才をやればプランが書けます。これまで、そうやって3年間で、300社のプランを書いてきました。
業種業態は関係ありません。それほどマネジメントというものは同じなんです。それは、人間対人間なのですから、同じハズなんです。
橋本
そうですね。マネジメントは人と人ですからね。もともとフューチャーラボラトリもフューチャー“ライフデザイン”ラボラトリとつけようかと考えていました。その考えそのものは今も変わっていません。
だから
「人」にとっての
・新しい生き方
・新しい雇用スタイル
・新しい利益分配の仕組み
を、フューチャラボラトリから提案していきたいと考えています。
児玉先生、今日はお忙しいところありがとうございました。
チバ
児玉先生のお話、山内さんはどう受け止められましたか?
山内
「得意なところを伸ばし続けて、ナンバーワンになればいいんです」。この言葉は心に響きました。私は今まで、一人で何でもできるようにと思い続けてきたので。だからこれからは、「得意なところをもっと伸ばし、そうでないところは人にお願いする」。
これでいきます。その点、橋本さんは人にお願いするのがとても上手なんです。
チバ
お願いされた方も楽しそうにやっているから、いいんですよ(笑)
山内
楽しく仕事ができることは、就職するにあたって目指したいところです。